□Ending−1 / 新しき道  ScenePlayer/斎藤 辰芳 : Area/警察署  : Entry/不可

GM: 「辰さん、これまで色々とお世話になりました……!」
GM: ――あのバス事件の後追い事件から暫く経って。
GM: とうとう今日、予定されていた退職日がやってきた。
辰芳: 「京極」
辰芳: 「結局お前は進歩無かったな」
京極: 「え、ちょ。せ、折角の良いところなのに、最後に言うのがそれなんですか!?」
辰芳: ドストレートに悪態をつく。
GM: ビシッと決めて挨拶したのに!?としょんぼりする部下。
辰芳: 「最後だから甘やかす事をしないでおこうと思っていた」
GM: ――結局、あの松坂が起こした事件も表に報道される事なく。真実は再び闇の中に葬られた。
辰芳: 「というかお前。結局あの後、東雲と二人でかかったヤマ終わってなかったじゃねぇか」首絞め。
GM: デミクリスタルを身に宿した彼は、この世に一切の痕跡を残すことなく。……結晶すらも、あの石に吸収されて。完全に消滅してしまった。
京極: 「い、いやいやいや違うんですよ。辰さん。」
京極: 「だってあの量めちゃくちゃ沢山あって俺たちだけじゃどうしようもなかってやめてやめて苦しいまじしぬ!?」
辰芳: 実際自分もたいしてわかっている訳でもない。それはレネゲイドに関わらず。
GM: ギブギブ!?と手を上げて。
辰芳: 警察は基本的に起きてしまってからしか事件に介入が出来ない。だからこその現状なのだろう。
辰芳: 「いいだろう」手を放す
GM: た、助かった……と言う顔を隠さない部下。
辰芳: 「京極。次はお前が取次の責任者だからな」
辰芳: UGNとの取次の話。面倒な調整役。
京極: 「……しかし、最後の事件は残念でしたね。結局犯人は死体すらも残らなかったんでしょ? ……って、は?」
辰芳: 「残らなかった」ぼやきをスルーする。
GM: 話題をそろーりと変えようとして――唐突に言われた事に、目をぱちくり。
辰芳: 「松坂については背後関係者がいる事はわかったが詳細は不明だ。後はUGNの調査で分かる話しだな。おそらく真相はわからないが」
辰芳: 「馬鹿な奴だった。とはいえ。仕方のない面もあるが」
辰芳: 「お前が責任者になるのもしかたない、ともいえる。諦めろ」
辰芳: 「警察に残ってて適当な奴お前ぐらいだからな。あのばーさんに推挙しておいた」
京極: 「仕方ないって言うか……自業自得では?」
京極: 「だって自分の為だけに余計な真実を公表しようとしただけでなく、賢者の石を作りだして世界に革命を!的な事に近い事を最終的に企んでいたんでしたよね。」
京極: 「……って、そうじゃなくて!? 諦めろって言うかそう言う大事な事はもっと早くから言って下さいよ!?こっちにも心の準備が!?」
辰芳: 「お前はレネゲイドの存在に慣れきったからその辺りの新鮮味がなくなっているんだよ。発症初期特有の万能感は統計にも表れている」
辰芳: 「隠されている事なんざ一つや二つでもないからな。レネゲイドなんて一つの不安定な道具にしか過ぎない」
GM: 新鮮味がなくなっている、と言われれば口を噤む。 ――多少なりとも、自覚はあったらしい。
辰芳: 「何人かいるが。お前が一番適切だったんだ。俺も警察学校の教官の合間に顔は出してやる」
辰芳: 「だがまぁ。俺は現役はこれで引退だ」
辰芳: どこかしら感情の籠ってない淡々とした口調。
京極: 「――……勤まりますかね、俺に。」
GM: 顔を少し引き締めながら。
京極: 「……それに、辰さんだって本当はまだ――……」
辰芳: 「俺はお前と組んで鍛えてきた。経験不足はあったが。もうお前は刑事だ」
辰芳: 「…俺は古い人間だからな。子供が戦場に出る事が当然になっていくこの状態が許せないんだよ。UGNもFHも。これからはもっと加速していく」
辰芳: 「この固執した考えはきっと時代の変化において組織でお前らのような若い奴を殺す」
辰芳: 「だから退くんだ。お前ら…お前に任せて」
京極: 「……確かに、そうでしょうね。先日の件でも……中学生の子ですっけ、その子も辰さんと一緒に動いてたって、報告読みましたし。」
GM: だけど、と続けて。
京極: 「確かに、時代の流れはそうかもしれない。それでも――辰さんの言う事は間違えてないと思いますから。」
辰芳: 「あいつは出来た奴だが。視野が狭くなりすぎる所がある」
辰芳: 「天才でも人間なんだよ。刺されたら死ぬし。殴られたら痛い。裏切られたら辛い」
京極: 「俺たちは例え“人外”の存在かもしれなくとも――“人”であることには、違いないですから。」
京極: 「俺が、俺たちが此処に残って、関わっていくことで……少しでも、その現実をどうにか出来れば良いなって、心から思うんです。」
京極: 「――夢物語みたいなものですかね、これ。」
GM: 言った後で、少し照れくさそうにして。苦笑する。
辰芳: 「俺達は刑事だ。だったら自分の行いで事件が解決し良くなると思い行動していくのは当然だろう」
辰芳: 「後処理からまた同じ事が起きないようにする」
辰芳: 「犯罪を起こす奴を逃がさない。足で稼ぎ。頭を使う。そして人の安全を守る。それが警察であり刑事だ」
京極: 「……そうですね。」
辰芳: 「熱意と夢が基本だ。それは俺が徹底的にお前に叩き込んだ」
辰芳: 「後は経験だ」
京極: 「……そうか、これからは“マムシの辰”の後継者みたいな感じになっちゃうんですかね。 責任重大だな、これは。」
辰芳: 「卒業証書でもあればお前にくれてやるところだな」
京極: 「その言葉が貰えただけで、俺は充分ですよ。」
辰芳: 「お前の後にも先にお前より優秀な奴はいた。だが俺の元でこき使われても務めとおしたのはお前だけだ」
辰芳: 「お前の柔軟さは人の上に立つのに最適だ」
辰芳: 「早く上に行け。ここで培ったものを持って」
辰芳: がし、と肩をつかんで。
辰芳: 「そして後輩にお前の背中を見せてやれ」
京極: 「――はい!」
辰芳: 「後はそうだな。…明日からお前を殴れなくなって物足りないか」
辰芳: ニヤリ、と笑う。
京極: 「だからなんで最後にオチをつけたがるんですか!?」
GM: ツッコんだところで、京極を呼ぶ声が奥から響いた。 ――恐らく、引き継ぎなどの説明があるのだろう。
京極: 「……それじゃ、行ってきます。辰さん。」
辰芳: 「任せた」
辰芳: 振り返り。手を振って歩き始めた。
GM: それ以上の挨拶は言わず。 此方も手を振り、反対方向へと駆けだしていく。

辰芳: うまくやれよ。暫し足を止め。自分の仕事を託した者の足音を聞き。去った後で歩き始める。
辰芳: もう自分の時代ではなくなった。だからここで終わり。
辰芳: これからはあいつらのようなものが中心となってこの変貌した時代で生きていくのだろう。
辰芳: 警察署を出て煙草を咥える。
辰芳: ライターを探していた時。携帯が鳴る。
辰芳: 電話先の人物から来たお祝いの言葉から始まっての軽口交じりの応答。
辰芳: そして。先日の事件の話に。当人が関わったとされる館と黒石の話を持ち出し。
辰芳: そして”娘”の話。だから電話先から一言。
辰芳: ―娘を護る為に組織を抜ける事にする。
辰芳: ああ。なるほど、と。自分も妻と子供がいるが故に。気持ちはわからないでもない。
辰芳: 自分の手の届くところでない所で事が起きてしまうのがたえられなくなるのだ。
辰芳: で、どうするよ、と。足を進めながら聞いた。
辰芳: ―そういう奴らの集合場所作ろうと思うんだが。マムシ。あんた、手伝ってくれない?

辰芳: どうせ暇だしな。



□Ending−2 / 静かな決意  ScenePlayer/橋場 直行 : Area/病院  : Entry/不可

(本文)

GM: 少女が再び救出されてから数日が経った。
GM: 暫くは安静にするように言われていた彼女も、ようやく近々退院の目途が見えてきたとかで。
GM: それにあわせて、面会許可も出されるようになった。

満月: 「……あ、えっと……。」
GM: 病室の扉を開けて入ってきた人物に気付くと、小さくベッドの上で頭を下げる。
直之: 「こんにちは、満月ちゃん。だいぶん顔色も良くなってきたね」
直之: 人懐っこい笑顔を振りまきながら病室に入って、その辺の椅子に腰掛ける。
満月: 「あ……はい。その……えっと、あの時は、ありがとうございました。」
GM: 小さく笑って、また頭を下げる。
GM: ――医者の話によると、どうやら松坂たちによって連れ攫われた事は覚えているらしいが。
GM: その前の……バス事件の事を、今度は本当に忘れてしまったみたいとの事で。
直之: 「どういたしまして。君を悪漢から救い出す事が出来て、本当に良かったと思ってるよ」
GM: 恐らく、あの館で松坂が無理やりに頭の中を掻き乱し、記憶を盗み見た際の後遺症か何かではないかと言う推測が立てられた。
GM: その結果、彼女は完全に覚醒。 入院中に、UGNによりある程度の説明は受けたとかなんとか。
直之: 「オーヴァードになってしまった事については驚いているだろうけど、幸い、黒巣市には同じような人たちもいる。」
直之: 「一般には秘密にしておくべきことだろうけど、満月ちゃんが困った時にはきっと力になってくれると思うよ」
満月: 「は、はい。 ……けど、その。余り良く分かってないんですけど……。」
GM: 苦笑を洩らす。 まぁ、秘密にしなければいけないって部分だけはよくわかった、と付け加え。
直之: その様子を見て。「――お兄さんにも秘密にするのは心苦しいよね。」
直之: 「けど、OVである事を知られると、君だけじゃなく彼にも危害が及ぶ可能性があるんだ」
満月: 「あ、いや。その、お兄ちゃんに隠すのは、その、別に……。」 ぶんぶんと頭振って答え。
直之: 「いいんだ」意外な言葉に、つい笑ってしまう。
GM: 良いってわけじゃないですけど、と。ちょっと困ったように手をぢたばたさせる。
直之: 「女の子には秘密の一つや二つあるほうがいいかもしれないけれど」困り顔に少しだけ笑みを収めて。
GM: ――二度も事件に巻き込まれた彼女にとって、更に不運だったのは。“共に巻き込まれた筈”の友人の記憶も一緒に忘れてしまった事だろうか。
直之: 「…もし、君が悪い夢を見て、だけど相談相手が見つからなかったら」
GM: あれから館の調査がなされたが、そこでも類する死体や遺留品は見つからず。 結局完全な行方不明と決定されてしまった。
直之: 「その時には、僕が聞いてあげるから」ぽん。彼女の頭に手をのせて優しく撫でる。
満月: 「……うん。」
GM: 撫でられれば嬉しそうに。
直之: 「僕は刑事になるから、きっと頼りになるよ。夢の中の難事件だって解決してみせよう」
直之: 無理に思い出す必要は無い。真実は、必要とする者が必要とする時に明かされればいい。
直之: ――傷心の彼女には、まだ早いと思うから。だから今は、夢の中での出来事として。
満月: 「刑事さん、ですか?カッコいいなぁ。」
直之: 「うん」頷いて。
直之: 「満月ちゃんには感謝してるんだよ。僕の進路を決めてくれた恩人の一人だし」
満月: 「恩人……」 少し照れくさそうに呟いて。
直之: 「マ……親は僕に官僚になれだのIT会社の社長になれだのって五月蠅かったんだけど、どうも気が乗らなくてさあ」
直之: 「やり甲斐のある職に就くのがいいよねっ」屈託なく笑って。
満月: 「……社長さんも凄いけど。刑事さんの方が、きっとカッコいいですよ。」
GM: そっちの方がきっと似合ってますよ!と、コクコク頷いて。
直之: 「僕もそう思う。喜んでくれる人を即実的に見られるのは嬉しいしね」
直之: 「僕、ポリスレンジャー大好きだったし」(何)
GM: それおにーちゃん前見てたなーって顔(何
GM: そして、少し考えるような表情になり。
満月: 「……私も、橋場さんみたいにかっこよくなれるかな。」
直之: 「なれるよ。格好良くも、可愛くも。信じて努力すれば必ず叶うよ」
GM: 今すぐには出来ないけど……と、行った直後に直ぐに気弱な声も漏れたが。
直之: 「元から満月ちゃんは可愛いけどね」もっかい撫でつつ(何)
満月: 「……う、うん。」
GM: 恥ずかしそうに撫でられつつ(何
直之: 「……友達を、守ってあげてね。それじゃ、僕はこの後用事があるからこの辺で」
GM: うん、と小さく返事して。 その姿を見送る。
直之: 格好良く生きるための条件だよと、指を1本立てて。笑顔を振りまきながら椅子から立ち上がる。
直之: 「じゃあね」

直之: 手を振って病室を辞した。
直之: そして途中で花と線香を買って、祐兄の眠る墓地へと向かう。
直之: “バス事故で、夫婦共々亡くなった”――という痛ましい事件だった。
直之: その真相を知る者は、極々限られている。
直之: 線香のたなびく墓石の前に立ち、ポケットから一枚のメダルを取り出す。昔、祐兄に買って貰った、オモチャのメダルだ。
直之: 宇宙の平和を守る刑事ヒーローの武器の一つ。塗料が擦れた玩具を墓前に供え、手を合わせた。
直之: 「祐兄…こんな決着で終わらせてしまって、申し訳ないと思ってるよ」
直之: 「僕、刑事になることに決めたよ。境界線上を往く僕だったら、この事件の全容を全て暴くことができると思ったから」
直之: 「――だから、見守ってて欲しい」
直之: 祈りと誓いの言葉を述べて、合わせた手をゆっくりと下ろす。
直之: 真相を知る者の一人として、UGNには『祐兄もバス事故で亡くなったことにしてほしい』と希望した。
直之: せめて二人が一緒であるようにと願って、真実を敢えてねじ曲げた。
直之: 「祐兄には不本意かもしれないけど…」
直之: 真実を明かす日までは我慢してほしい。心の中で、そう謝って。
直之: 静かに冥福を祈りながら、この場から立ち去った。



□Ending−3 / 旅立ち  ScenePlayer/天童寺 真夜・相模 明良 : Area/ファミレス  : Entry/不可

(本文)

GM: 事件も何とか解決し、明良さんが本来の“ホーム”へ戻る期日も気付けば間近になっていた。
GM: そんなある日。
GM: 支部である喫茶店で、先日レイスに燃やされた椅子やらテーブルの再設置を行うついでにちょっとした掃除を行うと言う話になってきて。
GM: なんやかんやで、君たちに半日ばかりの自由な時間が与えられた。
明良: 大分ボロったので、UGNの息のかかった病院に短期入院している間に期限が来ていた感じかな。(何)
GM: おお(何
明良: ミンチ一歩手前でしたよ俺
明良: ただいまー(`・ω・´)
GM: (ぶわっ
真夜: 僕も結構ボロボロだったな(何)
明良: ボロ組
GM: まぁ、怪我人2人組に掃除手伝わせるのも酷だし!と言う気遣いなんだろう(何
明良: あざあす(`・ω・´)
真夜: 気遣いが有難い(何
GM: (気遣い……かな……と言った後で自問する俺!
GM: まぁともあれ。 そんなこんなで、時間を潰すべく近所のファミレスへと足を運ぶ事になった。
明良: 静羽も抜けたようだし忙しそうだなUGN(何)
GM: まったくだな(何
明良: 店員がテーブルに置いて行った水の入ったコップを見ている。
真夜: 「…どうかしましたか?」水を口に運びつつ。
明良: 「色の無い水にはストローはつかないのだな、と学習していました」
真夜: 「・・・そうですね、お冷にストローがつく事はあんまり無いですね。ジュースくらいのものでしょうか」」
明良: 「飲料によって付属するサービスは異なる場合がある、ということですね」しりやーす。
GM: ――入院中に支部長から説明された話によると。 あの“種”と呼ばれたものは、最初回収した時よりも確かに力を持つものとなっており。
GM:近いうちに賢者の石の一つとして数えられる程の物になるだろうとの事で。
GM: 完全な問題の解決にはならないが、当面の間は日本支部にて預かられる事になったらしい。
明良: 妥当ですね…(何)
GM: うん……(何
真夜: うむ、支部の手には余る(何)
明良: 今の黒巣市にそんな大事な物守れる余力ないしな(何)
GM: はやく5年後になーれ(何
真夜: 戦力ダウンしてるからな(何)
明良: 店員が持ってきた、色鮮やかな写真が眩しいメニューをひらく。
真夜: 「好きなものを頼んでいいですよ。私が払いますから」
明良: たしか、1オーダーが世間のマナーだったか。こくりと頷いた。
明良: 「見た事もない食事が沢山あります」
明良: ぢー。無機質な目線がメニューを見下ろして。
真夜: 「…そうですか」
明良: 続いて、周囲を見渡した。私くらいの年齢ならば、どれを注文するのがベストであるのか。
明良: 「ではこの、イチゴパフェで」
明良: 任務の時のように、客観的に。かつ合理的に判断を下した。
真夜: 「じゃあ私も同じもので」と店員さん呼んで注文。
真夜: 「…そろそろ、終わりですが、どうでしたか?」
真夜: と、質問を切り出してみる。
明良: 「任務に関連する事柄については、何時も通り変わりありませんでした」
真夜: 「なるほど」と頷く。
明良: 「ただ、世間でいう一般常識というそれは、今まであまり経験がなく新鮮でした」
真夜: 「みたいでしたね。それはそれでいい経験になったと思います」
真夜: からん、とグラスの水を口に運びつつ。
明良: 「小学校に入って驚いた事があります」 人形じみた幼い顔で、とくに意味もなく告げる。
真夜: 「なんでしょう?」
真夜: 先を促す。
明良: 「誰一人戦闘に関して学んでいる様子がない。──日本の子供は、戦わないものなのですね」
明良: 「オーヴァードという存在が秘匿されているものだとはいえ」
真夜: 「そうですね。日本はそのような習慣がありませんし」
明良: 「ああも、何の備えもなく、警戒心もなく──そう、たしか、平和。平和に過ごしている」
明良: 「何が面白いのか、常に笑っている。時には泣いている。騒がしい」
真夜: 「それでいいんです。私達の仕事は、表に知らされなくていい」
真夜: 「経験を積んでいけば……いずれ、あなたにも分かると思いますよ」
明良: 「ああ。だからこそ秘匿された戦力というものに需要が生まれる、ということですね」
明良: 「我々のような」
真夜: 「『今日も一日何も無かった』。これが私達の仕事の証。決して賞賛こそ無いものの、確かな平和の証」
明良: 「………」
明良: 「はい」
明良: 無感情に頷いた。全く理解が及ばない。これからも、理屈でそうと分かっても、理解する事は一切ないだろう。
明良: 目の前の、人間に未練を残す機械化兵を見つめた。
明良: 「あなたは」
真夜: 「…あなたはまだ若い。これからの教育次第でどんな色にも染まれます」
真夜: 「・・・なんでしょう?」
明良: 反射的に質問を投げかけようとした言葉は、次に無意味だと悟って消えた。
明良: 「……いいえ。あなたは良い人なんでしょうね。きっと」
明良: テーブルに届いたパフェを、まじまじと見つめる。華奢なスプーンを手に取った。
真夜: 「……子供達を戦わせてる時点で、いい人ではありませんよ」と、館突入前の会話を思い出しつつ。
真夜: 「あなたも橋場さんも、普通に生活を謳歌するべきなんです」
明良: ───平和などという、まったく自分たちにはありがたみを感じないもののために、チルドレンは消費されるのだ。
明良: それが、大人たちが、平和は尊いものだと思っている限りはこれからも続く。
明良: 「謳歌、ですか……」呟いた言葉は、どこか虚しく響く。
明良: 「……それが、実感できる時が、きっと大人に──人間になるということなんでしょうね」
明良: 味覚も感覚もない舌に、よく分からないものがスプーンで運ばれていく。
真夜: 「……あなたは充分人間ですよ、相模さん」
真夜: 同様に自身にとって栄養にもならず味も無い物体を口に運ぶ。
明良: 私はあなたのようにはなれない、と思う言葉も、淡いクリームに溶けて消えた。
明良: 「───1年後、2年後……そうですね、もしかしたら5年後くらい立てば。その言葉に、何か感じる事があるのかもしれない」
明良: 「その時まで、互いに生き残っている事があれば」
明良: 「また、あなたに教えを乞いに会いたいものだ」
真夜: 「……私も、また会えることを祈りますよ」
明良: 夢物語のような不確定なそれを呟くのは、らしくなかった。
明良: ……今はまだ、正直彼女の言葉が理解できない。理解する価値すら分からない。
明良: だが、それも──まだ知らないだけなのかもしれなかった。今まで知らなかった、ストローの価値のように。
明良: それを学んだ、ということが、今回の収穫であり、目の前の彼女から教えられた事なのだろう。
明良: 「ありがとうございました。──“パッチワーク”。あなたには、お世話になった」
真夜: 「どういたしまして、"アイアンメイデン"。あなたの未来に、幸多からんことを」
明良: なんと返していいか分からずに、次までには会話パターンを増やすべきだと課題を思考の片隅に起きながら、頷いた。
明良: 「──そろそろ時間だ。戻らなくては」
真夜: 「…そうですね、そろそろ戻りましょうか」
明良: 「はい」
真夜: 伝票を持って立ち上がる。会計の際に、脇にあった小さいお菓子を適当につめてもらい、明良さんに渡す。
真夜: 「私からの、お土産です」くすりとわらう。
明良: ぽすんと受け取った。首を傾げる。
明良: 「ありがとうございます」
真夜: 「どういたしまして」よろしい、と言いたげに頷く。
真夜: そのままカランカランとドアベルを鳴らし、外に出る。
明良: ──鐘の音にもよく似たそれ。そういえば、この市の中央にもあった。鐘が。喫茶店から出て、ふと顔を上げた。
明良: 昔から残る、時計塔のように聳えるそれ。それを陽の眩しさに目を細めながら見上げて──
明良: 「──そういえば、別れの時にも鳴らすのだったな。鐘は」
明良: 自分がこの市から去る事ではない。──この市で出会った人らとの別れ。
明良: 亡くなった胎児と親達。いろんなものに対して木霊する様なそれに聞こえ、人形のような少女は首を振った。



□MasterScene / 新しい世界  ScenePlayer/---- : Area/***  : Entry/不可

休みも終わり、病院も退院して……ようやく何時も通りの毎日が戻ってきた。
……あの時の事は記憶もあやふやで。結局自分でも何があったのか、いまいち分からないままだ。
だけど、それでも良いと思った。――思い出さない方が良い。その想いだけは、強く残されて。

その一方。 確かに自分は、心の奥でどうしようもない喪失感を抱えていた。
大事な何かを失ったような、寂しい感覚に押しつぶされそうな毎日。
“誰にも喋れない秘密”も相まって、気付けば学校内において一人で過ごす事が多くなってきた。

――そんな自分たちが出会ったのは、偶然だったのだろうか。

最初は気のせいだと思った。だけど、確かにそこに“彼女が居た”。
何となくだけど、彼女も同じような“秘密”があると直感した。だから。

「――あ、あのさ。……きれいだね、その“お姫さま”。」

同じ学生服を着た少女の、その傍らに佇む着物の女性を見て。 おそるおそる声をかけた。

――失なった“絆”が、別の“絆”へと繋ぎ直された瞬間だった。




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