□EndingPhase / OnStage
◇MasterScene-3 / 紅と蒼の狭間  ScenePlayer/− : 場所/?  : 登場/不可
――辺りが徐々に明るくなる。

ゆっくりと目を開けば、そこは真っ白い部屋のようだった。
視界が妙にぼんやりとしているのは、未だ完全に覚醒していないからなのだろう。
起き上がろうとして力を入れる。が、思うように動かない。 ……どうやらベッドに寝かされているらしい。
如何してこの様な所に……?

『街中で急に倒れたから』

突如降ってきた声。 視線を其方へと……誰かが近くに立っている?

『名前は言えるかな?』
名前、は――……
縺れながらも告げる。 その人物――“彼”が笑った、気がした。

貧血と心労が重なってしまったのではないか、と彼は言う。
……あぁ、またか。つくづく病弱な身体だと弱々しい苦笑を浮かべ。
視線を少し下に動かせば、何やら腕から赤い管が伸びているように見えた。
その色に、何処かで懐かしさを感じていると――再び瞼が重くなる。
不安になってまた彼の方を見て……額に暖かな感覚。
そうだ、これは……良く知っている温もりだ。 掠れた声で、小さく呟く。

「――お休みなさい、父さん。」


――流離いの子供はやがて定められた通り月へと到った。
浮かぶ刻印を静かに撫で、また笑う。



◇Ending-1 / 想い馳せて  ScenePlayer/砂原 青良
GM: ――今年に入って、このような仕事はもう何度目になるのだろうか。
GM: “向こう側”の仕事を終わらせて、ようやく一息を入れる事が出来そうだ。
GM: とは言え、未だ終業までには時間がある。 何時もの仕事部屋に戻る事にしようか……。
青良: 「──ウフフ。こういった忙しさは嫌いではないですけれど、もう少し刺激的なものをお願いしたいですわ」
青良: ほふん。ヒールの踵を控え目に鳴らしつつ。さてスケジュールでも見てくるか、とほてほて秘書室に向かう。
GM: スケジュールカレンダーには今のところ、これ以上は特に何もなさそうではある。 ……けどまぁほらああ言う上司だs(ry)
青良: また何時無理難d(ry
GM: そうしてその場から離れようとした際に。 肘に何かが当たり、音を立てて床へと落ちた。
青良: 「────アラ。何もありませんのね。………?」
青良: 背筋を伸ばしたまま、膝だけ落として、何ぞ落してしまったものでも拾おうかと。
青良: 「アラヤダ。これは──」
GM: 欠けた刃に見えますの。 適当な所に潜り込んでたのが妖精さんの仕業によtt(ry
青良: 使い古した薄っぺらいナイフが壊れたようにも見えるそれを、ファイリングされた薄桜色の爪先で摘まんで。
青良: 「そういえば……そろそろ十年位立つかしら」アラ、懐かしいものを思い出した。
GM: 10年前――未だ、自分が“此方側の人間”だと認めていなかった時。
青良: まだ意固地になっていた頃。色んなものを見限ってなかった頃。面白そうに笑って。
GM/?: 『――このデータは、きっと我が社を更に巨大な物にする為には欠かせない物となる。 表側としても、裏側としてもね。』
青良: 「………でも。あれはあれで楽しかったですわ、あの頃も」
GM: あの時――恐らく、転機となったあのお使いから帰ってきた上司はそんな事を言っていた。
青良: 遠い記憶で、思い出した。そう、まだ『各務のにいさま』に褒められて純粋に嬉しかった頃だ。
GM/各務: 『――それに、君が持ち帰ってくれたこの石。』
GM/各務: 『……噂には聞いていたけども、まさかこれが手に入るとは。喜ばしい誤算だよ。』
GM: そう言って、嬉しそうに彼は笑っていた。 珍しく、ボーナスも弾んだのはきっとあの石のお陰なのだろう。
青良: 喜んでくれることを期待したものの、そこまで嬉しそうにしてくれるとは思わなかった自分はぱちくりと目を瞬かせて。
青良: 『───各務のにいさま。…私、役に立てるかしら。砂原のものとして』
GM: その言葉に、軽く笑って。
GM/各務: 『当たり前だろう? 君は僕にとって大事な人の妹さんだ。……何時もとても助かっているのだからね。』
GM: こうやって傍で働いてくれているだけで。 微笑みを浮かべる。
青良: 「───そのすぐ後に他の人と結婚して子供まで作ったクセに、」
青良: 「そうやって躊躇なく優しい言葉をかける各務のにいさまの酷い所。嫌いじゃないわ」
青良: 自分の兄達も似たようなもんだった。しみじみ思いだしつつ。(何)
GM: ・・・・・・・・・
青良: だって
GM: そそそそうじゃん実子いるじゃん!(何
GM: <現代
青良みかえるるしふぁー(笑)
GM: もう駄目だなこのシャチョーさん(何
青良: くっく。面白そうに笑って、自分は微笑んだ彼の手を取ったのだ。
青良: 「ねえさまが死んでいようと生きていようと、砂原の生業は各務を表に出すことだわ。」
青良: 「利用してくれて、構わなくてよ。それがビジネスだもの──『社長』」
GM: ――それから、彼の云う通り。 各務と言う、単なる一製薬会社に過ぎなかった物は事業を拡大し――今に至る。
青良: 「………………」
青良: 「今思えば社長のどこが良かったんでしょうね」(何)
青良: 「ウフフフ。すごい騙されてました私」
GM: 今がこれならば、果たして未来はどうなっているのだろうか。 ……“God Only Knows”、まさしく『神のみぞ知る』事だろう。
青良: あんな純粋な頃の私もあったなあ、とか思いつつ。ナイフをデスクの引き出しにしまう。
GM: しー(何 <何処が良いとか
青良: 「まあ、今となってはバトルと白兵イケメンがあれば私としてもどうでもいい話ですわ」(何)
青良: くっくと笑い捨て。──シズハも、シノブも、今はどうしているかしら。きっとロクでもない事になっているだろうことは確信しつつ。
青良: 「あの館に、きっと私達が集まったのは───」
青良: 「ただの、大事なものを失ったもの同志が、互いに憐れみあう為だけですわね。きっと」
青良: 敢えて捻じれた価値観で、のほんと呟いて。──コツ。腕時計を見て、扉へ向かう。
GM: その時、丁度扉よりノックする音が。
青良: 「アラ。どうぞ」
GM/?: 「――失礼するよ。 ちょっとまた、急用が出来たのだけども……」
GM: のほほんとした声。
青良: にこり。柔らかく微笑んだ、完璧な営業スマイルで相手を見返す。
GM/各務: 「――勿論、行ってきてくれるね? 君が一番適しているんだ。」
GM: 期待しているよ、と声をかけ。 そのまま社長室に来るように伝えれば先に戻っていく。
青良: 「ウフフ。──もちろんですわ。社長」一礼を返して。かつての、各務のにいさまの背中を見て。
青良: 「………ハ。それではもう一度、始めましょうか」
青良: 「我々のビジネスの時間を、ね」
青良: くっく。笑い捨て。──束の間の日常の幕は降りた。



◇Ending-2 / 巡り合うモノ  ScenePlayer/御堂 忍
GM: 医者と言うものは何かと忙しい。
GM: 今日は何時もの勤務先から出て、市外の大学病院へとやってきた、
GM: ――半日以上経過。
GM: そうしてようやく今回の仕事を終えて、自由な時間を得る事が出来た。
: 「ふう──」緊張をほぐそうと、大きく伸び。此処に来ると無性に緊張する。
: かつて世話になった事もあるこの病院を懐かしみながら、ふらりと病棟を抜け、中庭へ出ようと思った。
: 「…………あれ?」
: 眼の端で、何かに気づき足を止めた。振り返って“それ”を探してみれば、一つに病室の入り口へと。
GM: 如何見ても見覚えのある名前ですね、分かります。
: 「………」此処で同名とは珍しい。半開きになった扉から、僅かに中の様子が見えた。
: 「あれ…?」もう一度、疑問を口にして。軽く扉をノックしてみた。 
GM: 窓の方を向いてベッドの上で誰かが横たわってるのが見えた。
: 「神無月、さん……?」
GM/?: 「…………ぅ、ん……?」
GM: 寝ぼけ声と、小さな欠伸一つ。 少し上半身を起こして呼ばれた方へと。
: 全くの別人ならば、部屋違いを謝罪すればいいかな。そう思いながら半身を部屋の中へと。
GM/冴: 「…………」
: 「…………」
: 室内に漂う妙な沈黙(何)
GM/冴: 「……お、はよう……ございます?」 寝ぼけ眼の目をこすり、台の上に置いてあった眼鏡をつけて。
GM/冴: 「……あ、あれ? 忍さん、ですか? 何でこんな所に……。」
: 「……え、えっと…本当に神無月さんだったんですね。お休みのところすみません……ッ──!」
: 分かっていながらもやはり焦りは生じるもので。慌てて扉を閉めようとして、指を挟んだ。
GM/冴: 「え、ちょ、待って落ち着いて下さいど、如何されたんですか!?」
GM/冴: ようやく相手を完全に確認したところで。バンドエイドどっかにあったっけ、と持ち物の中を漁り。
: 「所用で寄りましたら、神無月さんの名前を見つけたもので…」
: 指を押さえながら、走る激痛に顔を強張らせながらも笑顔を浮かべた(何)
: 「ああいえ、何でもないです」
GM/冴: 「は、はぁ。そうですか。 ……何か妙に病院でお会いする時が多いですね。」
GM/冴: 絆創膏無かった。ちょっとしょんぼり。 苦笑して。
: 「怪我の多い副業をなさっているせいですよ」
: 鞄を手に病室内に立ったまま室内を見渡す。既に見舞いがあったのだろうか、控えめな色彩の花束が目に付いた。
GM/冴: 「まぁ、そうですよね……。」 右腕を動かそうとして――そう言えば管刺さってたなと思いだして。慌てて左手で頬を掻き。
: 「心労か何かで、出先で倒れられたんですか?」管の先のパッケージ表記を見つつ。
GM/冴: 「……流石お医者さんなだけありますね。 お恥ずかしながらその通りでして。」
: 長居をするつもりはありませんが、立ち話も何ですからと、傍らの椅子を引いて腰かける。
GM/冴: 「ああ、それ。綺麗ですよね。 如何も何方かが寝ている間に来たらしく…………誰なんだろう。」
GM: 確実にアイツではないしな、とか呟きつつ首を傾げる。
: 「ご自愛ください。あなたを待っている人が何人もいるんですから」やんわりと笑みを浮かべる。
GM/冴: 「き、肝に銘じておきます。 もう少し行けると思っていたのですけどもね……。」 はぁ、と溜息漏らし。
: あくまでも医師としての立場から告げて、おや、と目を見張る。
: 「何処へです?」
GM: へ?と呟き漏らして。
GM/冴: 「…………あ、あれ?何処だろう。 何処かを目指していた筈、なんだけど……。」
GM: 考え込む。 ――そう言えば、そもそも何処で倒れたんだ?
: 「なにか、夢でも見られたんですか」軽く笑って、鞄を椅子の傍らへと置いた。
GM/冴: 「夢……そう、なのかな。」 また少し考え込む動作。
: 「何処かを目指す夢、というのは──ジレンマを抱えた悩み多い時期によく見てしまいますよね」
: 「そういえば、僕も……うん。そういう夢なのかな、見たことがありますよ」
GM/冴: 「ジレンマ、か。 思い当たる事が多々あって困るな……そ、そうなのですか?」
GM: それはお伺いしても?と尋ね。
: 「何処かを目指すといいますか、脱出といいますか。受験勉強をしていた時期だったせいですかね……」
: ふむ、と顎に軽く手を当てて思い出そうとする。
GM/冴: 「大学受験ですか? 医学部と言うならば相当のものだったでしょう。」
: 「そうですねぇ。僕は高校2年になってからのスタートで、かなり出遅れていました。追いつくことに必死でしたよ」
: 懐かしさに軽く笑いながら、椅子から立ち上がる。
: 「道に迷ってたどり着いた洋館の中で、生き残りをかけた戦いを行って………暗示といえば暗示でしょうかね」
: ──今では何もかもが夢の中の出来事と思っている。
: 氷漬けとなった異形の存在。女子高生達が炎を生み出したり、血塗れの刀やナイフを握ったり。
GM/冴: 「入退院を繰り返しながらの勉強はさぞかし大変だったでしょうね……。 しかしそれは何と言うか。」
GM: 物騒な夢ですね、と苦笑して。
: 洋館の中で起こった出来事は、受験勉強のストレスが生み出した幻覚、夢なのだろうと。
: そう片付けるのが自然な成り行きだった。
GM/冴: 「……それで、無事にそこから逃げ出せる事は出来たのですか?」
: 「幸いなことに、その頃は体調も悪くなかったので随分と無理もできました」
: 労いの言葉には軽く手を振って。
: 「──それがですね」
: 「外から、燃える館を見ることができました。脱出はできたんだと思うのですが、どうやったのかはよく覚えていないんです」
: 「一緒にいた人……幼なじみの女性とその友人方だったんですが、その二人の獅子奮迅の活躍は覚えています」
: 「それと………」
GM/冴: 「忍さんは活躍なさらなかったのですか? それと……?」 軽く笑いつつ。 続く言葉を待つ。
: そういえば、と。ベッドに身を乗り出して横たわる人物の顔をじっと見つめた。
: ──うん、いつも鏡の中に見ている顔だとは思うのだけれど。
GM: 行き成りじっと見られれば戸惑い。 何ですか?と。
: 「……気のせいかなあ。“あの人”が神無月さんなのかな…と、今になって思えばそんな気が……」
GM/冴: 「あ、あの人? ……僕も其処に居たのですか?」
: 心許ない視力が故に、間近からまじまじと見つめ、朧な記憶と重なる部分を探し出した。
: 「いやあ。白い仮面を被っていたんですけど、なんとなく僕に似た感じの人だと思ったんですよ」
GM/冴: 「白い仮面……ですか。」 はぁ、と頬を掻き。
: 後味の悪い罪悪感は胸に残っている。再び会えれば投げつけた言葉を謝りたいと、そう思う事もあった。
GM/冴: 「しかし貴方に似ていると言うのであれば、確かにそれは僕にも似ていると言う事になるでしょうね。」
GM/冴: 「その人は何をやっていたので?」
: 水鏡に映る見慣れた対象に、『自分ではない』ことを思い出すと同時に、急に居心地の悪さを感じ。乗り出した身を退いた。
: 「道案内と…………“朗誦”」
: 「…『悲劇と喜劇、あるいは茶番劇』」
GM/冴: 「道案内はまぁ、想像できるとして……“朗誦”? 何を――」
: 彼が口にしていた言葉を口ずさみながら、ふらりと立ち上がる。
GM: 一瞬、表情を強張らせて。 慌てて立ち上がる彼の方を視る。
: 「………」
GM/冴: 「……忍、さん?」 恐る恐る。
: 活けられた花束を掴むと、花瓶の中の水をテーブルの上に零す。
: 無造作に。冗談めかした笑みも無く、静かに広がりゆく水面を見つめた。
GM/冴: 「忍さん!? 一体何を!」
: 水面に映るのは自分の顔。──あの時、僕は、赤い鏡面に映る母親を見ていた。
: 懐かしく、そして淋しげ翳る微笑──それが不意に滲めば、見知らぬ誰かの顔へと変わった。
: それが誰だったのかなんて覚えていない。
: ほんの一瞬だ。…気がつけば、終わっていたのだから。血は炎へと。炎は灰へと。
GM: 慌てて、自由に動く片腕を伸ばして忍せんせーの腕を掴もうと動く。 ――届くか届かないかの、微妙な距離。
: 意識を取り戻す。倒れそうになっていた躰をテーブルに寄りかかることで支える。
GM/冴: 「ちょ……ちょっと、待って下さい! 今、看護師の方を!」
: その腕を病室の主が掴む。蒼白になりながら、声だけは凜と。
: 「その必要は無い」
: 「──どれだけ失おうと、在りさえすればいい」
: 「万に一つも必要とする時が来るまで。そのために用意した」
GM/冴: 「……忍さん? 一体……」 視線は動かぬまま。 ――急に変わった雰囲気に戸惑う。
: 「………すみません。ご迷惑をおかけしました」
: 水浸しになったテーブル。惨状に困惑を浮かべて。
GM/冴: 「い、いえ。 それよりも……用意って何を、ですか?」
: 「え?」
GM: 雰囲気が戻った、気がした。 恐る恐る尋ねてみるが。
: 「用意って、何をですか?」逆に問い返す。全く同じ言葉で
GM/冴: 「…………」
GM/冴: 「い、いえ。 何でも……ありません。すいません。」
GM: 苦笑して誤魔化した。 タオルあったかな、と視線を動かし。
: 握りしめていた枯れ花を傍らに置き、何か拭く物を探しに部屋を探る。
: へこへこと何度も頭を下げ、見つけてきたタオルを用いて必死になって零れた水を拭き取った。
: 「何しに来たんだか……本当に、すみませんでした」
GM/冴: 「い、いえ。気にしないで下さい、此方こそ長々と引き止めてしまい……。」
: 空になった花瓶を戻して、もう一度深く頭を下げる。
GM: ぺこぺこと頭を下げて苦笑。
: 「ええと…それでは、僕はこれで。お大事に」
: 何かを忘れているような気もしたが、今は一刻もこの場所から離れたかった。
: 掻き抱くようにして鞄を掴み、深々と頭を下げて部屋を辞した。
GM/冴: 「あ、はい。 ……今度こそは、病院外でお会いしたいものです。」 ありがとうございました、とその背に声掛け見送る。
: ──誰かの声と、彼の声が重なって聞こえる。
: 自分の心労も大概だな、と苦笑して。扉を閉めた。
: 『今は私こそが影。君が表舞台に立つといい』
: 誰が私で、誰が君なのか。
: 分からないし、考えたくも無い。──早く、黒巣に戻ろう。
: 手にした鞄を両手で強く抱いて、足早に廊下を抜けた。


GM: 一人、静かになった部屋の中に残されて。
GM: 何時の間にか色彩が失われた花を見た。
GM: 「……どうして、貴方も知っているんですか。」
GM: 『悲劇と喜劇、あるいは茶番劇』。
GM: 一体自分は、“誰の目線”でその夢を見た?   ――頭が妙に痛む。まるで警鐘を鳴らすかのように。
GM: ……ああ、そうか。 だから今、“僕”は、此処に居るんだっけ。
GM: 僕の中でダレカが眠れと囁いた。 甘美な誘いには抗う術も知らずに。
GM: ――小さく嗤う。 その事に自分自身が気付かないのであれば、果たして誰が気付くのだろう。
GM: そして意識は再び。 鮮やかに赤い赫い水の底へとオチテイク。


◇Ending-3 / 受け継がれるイシ  ScenePlayer/久継 静羽
GM: ――あれから5年の月日が流れた。
GM: あの時……身体は既に一部が崩壊していたので別のナニカで代替えする必要はあったものの。一命を取り留めた少女は。
GM: あの時の願い、想いを忘れずに生き続け――ただ、前を見て“自分の道”を歩いてきた。
GM: “師”と仰ぐ彼女に時々つきまとったりしながらも。 幼いながら、一生懸命に胸を張り――

静羽: ────ぽた。
静羽: ──────ぽた。
静羽: 一瞬。
静羽: 鈴と呼ばれた少女に師と呼ばれた人物の血が降りかかる。
GM: ……水音が聞こえた。 ――何だろうと、其方の方へと視線向けて。生暖かいものが降り注げられる。
静羽: 鈴の足元には庇った際に斬り飛ばされただろう師の右腕。包帯が解け。中ほどに蒼く鈍く光る石。
静羽: 二間程先。未だ薄暗い闇の向こうで。長身の男が槍を振り払ったのが見えた。だから──鈴を──
GM: 足もとに転がるモノを見れば、ようやく正気に戻る。 急ぎ、師の負傷を回復させようと自らのレネゲイドを急速に高め――
静羽: ──なんでだ?庇う必要など────無いじゃないか。
静羽: 自分の目的の為に。屍を積み上げる等。今更のは──
静羽: ひゅぅ、と荒い息を吐いた。落ちていた刀をゆっくりと左手で拾い。背後の鈴に投げ捨てる。
GM: 動かないで!と叫ぶ。 ……が、師の耳には入っていないのではないか。
GM: 不安だけが募る中、背後からの金属音が妙に澄んで聞こえる。
静羽: 俯くな。胸をはれ。足に力を入れろ。敵に向かって眼を向けて。ふてぶてしい笑みを浮かべてやれ。
静羽: もう前の話。あの館であった野郎から「後悔する」とも言われた。ああ。こういう事をいってやがったのかもしれない。
静羽: 御堂なら堅実に己の道を歩いているだろう。障害があったとしても。着実に。
静羽: 青良なら──あの馬鹿なら大きくなる自分の痛みを抱えつつ突っ切るだろう。ニュートラルとトップギアだけ。
静羽: あたしは──
静羽: 後悔してるのか。
静羽: ばさりと。コートを脱ぎ。鈴に覆いかぶさるようにかける。
静羽: 進むも退くも──
GM: ……回復をどれだけしようが追いつかない。 ならばと片手で刀を握ったところで、またあの時の様にコートが被せられて。
静羽: 「どっちでも、いいんだ。あたしは」
静羽: ──”本当に成すべき事は何も変わらない。”
静羽: でも。理由があるなら。
静羽: 「鈴」
GM/鈴: 「――何?」
静羽: 「今日からお前の名は鈴羽だ。あたしの一字。やる」
静羽: 「あんたはあたしの”子”だ」
静羽: 子供を護るのに。──大層な理由なんて要らない。
静羽: 行きな、と残った手でとん、と押す。
静羽: その手には火のついていない煙草。
GM/鈴: 「…………」
静羽: 此処は何処とも知れない暗い暗い奈落の底。
GM/“鈴羽”: 「分かった。 だけど――待ってるから、“母さん”。」
GM: 直ぐに追いついてくれるのを。 ――それは口に出さずに、笑い。
静羽: 数年に渡り探した、血を分けた子供の生存を確認した故の。──只の奪還劇。
GM: 後は振り向かず、脇目も逸らさず。 ただただ、走る。 ……きっと、それを望んでいるだろうから。
静羽: それの結末。
静羽: 暗闇の中に蒼焔が一つ。
静羽: 煙草に火が灯り。
静羽: 掻き消えた。



静羽: 少年は錆びたナイフを片手に瓦礫が積みあがった塵屑の山の上に腰掛けて雨にうたれていた。
静羽: 自分の中の大切なモノが。音を立てて眼前で次々と消え去った今。俯くしかなかった。
静羽: だから。
静羽: 地から見上げているそれに気づかなかった。”影”
静羽: だから問うた。──君は何だと。
静羽: それは。言葉を切り。胸を張って。
静羽: 「道ゆく者。──牙狼の王」
静羽: そう告げた。
静羽: 雨だけが流れていた。





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