――そうして切り離された世界に一人、残り続ける者。
燃え盛る中、天を仰ぎ。 「――三文芝居ですね。 居るのでしょう?出てきて下さいよ。」 「流石にソレは駄目ですよ。 やられたと言うのであれば、素直に退場して貰わないと。」 叫び、気怠げに視線を戻した先には……黒い石を中心に朧げながらも人型に集まる塵。 「……主からの真なる解放を狙っていた貴方だ。彼女らに勝ち、石を完全に集めきる事が出来ればそれで良し。」 「勝てなくとも隙を見て何処となりと逃げ、時期を経て再び力蓄えるも良し……そんな辺りでしょう。」 「余程、便利な能力を真似たようですね? ……あぁ、それともオリジナルの持っていた可能性が開花したのかな?」 人型は答える事もなく、地に刺さる刃を抜き。構え。距離を一気に詰めればそれを振り下ろし―― ガチンと固い音がした。投げた仮面で刃を弾いたらしい。 「――失望しましたよ。 よもや、定められた役割をこなせなかったばかりか醜態を晒すとは。」 「素体となった方々……は悪くないか。 寧ろ詰め込み過ぎたのが駄目だったのかな?それとも中心となった作成者達が悪かったのか。」 ま、最早如何でも良いか。 『彼』と同じ顔をした少年は肩を竦め。 ……人影に怒気が混じったのは気のせいだろうか。そうだろう。 「しかしね?喜んでください。 主は寛大な方なので、名誉挽回の好機を与えると仰っております。」 「今度こそ、その役通りに動いて貰いますよ。 ――血の供物を捧げる事すらも出来ない貴方にとって、最期の機会ですからね。」 一閃。 それは複数の欠片となり地へと落ちた。塵もまた、炎の中へと消えていく。 紅く燃え盛る炎のせいか、それとも。 赫い鎌を携えたまま、その欠片を拾い集めた。 “――Ubi est frater tuus?” 背後より聞こえた声に、笑みを浮かべ答える。 「“Nescio num custos fratris mei sum ego?”」 振り返り、その人物を確認し。 嬉しそうに駆け寄って、その腕へと収まる。 ――やがて、誰も居なくなった。 |