「とまぁ。こんな所ですね。何かありましたら」
薄汚れた白衣を着た少年がにこにこしつつ、現金を受け取り。確かめた後。大柄な男性と女性、そして眼光の鋭い少年の方を見て。 頷いて去る。足取り軽く。一人は重く。ただしっかりと。 ヴァンガードの司令室。残された女司令はシケモクを投げ捨てながら。 調べによるとロクモクテンのパイロットは…20年も前からのオーヴァード…スペリオル隊員だったらしい。 義に、武に、知に長じる優れた人間だった、しかし。ARCという絶対的な武の前に地を舐めた。心が折れてしまった。 ──憎んだ。それを。その始まりを。ARCを。それでも届かなかった。”適性”が無かったから。 だから自分を捨てた。機械の身体になり。薬を使い 自分を変えた。苦痛と終わった未来とすべてを抱えて鬼として戦場に舞い戻った。 其の手に一人の技術士が手を貸して。終りの無い復讐鬼は完成した。 しかし。其の復讐も──とどかなかった。 仲間を捨て。敵を欺き。全てを敵にして手に入れた力も。 とどかなかった。 良くある話だ。 女司令は煙草に火をつけ。 一枚のデータディスクを灰皿の上にほおりなげ。火をつけた。 〔C/Rainbow〕と書かれたそれはあっという間に炎の中に溶けて消えた。 復讐という名の一つのおわらないはなしのおわり |